デザインで紡ぐ、人と地域の物語
「かっぱ企画」は、創立から15年を迎えたデザイン会社です。横浜でスタートしたこの会社は、都市の洗練された環境の中で、多くの挑戦を重ねてきました。企業プロモーション、動画制作やウェブサイト制作、広告デザインなど、幅広い案件を手掛け、都市ならではのスピード感と多様な価値観に触れながら、カッパはデザインの可能性を磨き続けてきました。
そして、3年前、カッパは拠点を島根へ移しました。この大きな決断の背景には、地域社会の中でデザインが果たせる役割をもっと深く追求したいという想いがありました。都市で培った技術と経験を携え、自然豊かな環境の中で地域の声に耳を傾けながら、新しい形のデザインに挑戦しています。
都会で培ったスキルと、地域での新たな視点
都会での仕事は、カッパにスピードと柔軟性を教えてくれました。多くのプロジェクトが同時進行する中で、限られた時間の中で最適解を見つけ出し、クライアントの期待を超える成果を出すこと。それは、都会ならではの刺激的な経験であり、かっぱ企画の土台を築く原動力でした。
一方で、島根での挑戦は、デザインのもう一つの側面をカッパに教えてくれました。それは「じっくりと人々の声に向き合い、地域の物語を掘り起こすこと」の大切さです。例えば、地域の行事のチラシを作る際には、地元の人々と直接話し合い、どんな想いが込められているのか、どのような人に届いてほしいのかを丁寧に伺います。そうして作られたデザインは、単なる宣伝物を超えて、地域の人々の誇りや温もりを映し出すものになります。
過去100年分の記憶をデザインで未来へ
特に印象深い仕事の一つが、町の過去100年分、数千枚に及ぶネガフィルムの現像です。都会で培った効率的な作業スキルを活かしながら、時間をかけて一枚一枚を丁寧に仕上げていきました。その作業を通じて、かつてのお祭り風景や家族団らんの笑顔、そして失われた風景が次々と蘇りました。
写真を手にした人々の声は今も忘れられません。
「この風景、祖母がよく話していた場所です」
「こんなに若かった頃の父の姿が見られるなんて」
その瞬間、カッパはデザインが単なる制作ではなく、記憶を紡ぎ、未来への架け橋となる力を持つことを改めて実感しました。
地域と共に歩むデザイン
「かっぱ企画」が島根に拠点を移してからの3年間は、新たな発見と学びの連続でした。都会での経験を携え、地域と向き合うことで、デザインの持つ本当の価値や可能性を深く感じることができました。それは、人々の生活に寄り添い、地域の未来を共に考えるデザインです。
都会では、情報が溢れ、効率や成果が求められる中で、スピード感と洗練された表現力を磨いてきました。一方で、地域に根ざした環境では、目に見える成果だけでなく、「人の心にどう届くか」が問われます。たとえば、地域のお祭りのポスターを手がける際、そのビジュアル一つが地域の人々にとっての誇りや原動力となり得る。観光地の案内看板をデザインする際、訪れる人たちがその地に愛着を持ち、また来たいと思うかどうかを左右する。そうした「地域の息づかい」を感じながらデザインを形にすることは、都会での仕事とは異なる、特別な責任と喜びを伴います。
特に、島根のように自然や伝統文化が豊かな地域では、デザインが果たす役割はさらに大きくなります。地域の魅力は、その地に住む人々にとっては日常の一部となり、時に気づかれないまま埋もれてしまうことがあります。しかし外から訪れる人々にとって、それは目を見張るほど新鮮で、心を動かす力を持っています。カッパは、その「地域が持つ本当の価値」を掬い上げ、デザインを通じて多くの人々に伝える役割を担っています。
一つのプロジェクトを通じて感じたことがあります。それは、デザインとは単に「作る」ことではなく、「繋ぐ」ことだということです。地域の人々が持つ記憶や感情、そして未来への希望を形にし、それを地域内外の人々に届ける架け橋となる。それこそが、地域と共に歩むデザインの本質です。
また、カッパはデザインを通じて、地域に眠る新しい可能性を発見するお手伝いもしています。たとえば、地元の特産品を魅力的にアピールすることで、新たな販路が生まれる。観光地のポスターや動画を通じて、地域の知られざる魅力を全国に発信し、新しい訪問者を呼び込む。そんな形で地域の持続的な発展を支えるのも、デザインの力が持つ重要な役割だと感じています。
これからもカッパは、地域の方々と共に歩み、その土地ならではの物語や人々の想いを大切にしながら、デザインを形にしていきます。地域が持つ魅力や価値を発信し、未来へ繋げるお手伝いをすること。それこそが、かっぱ企画の使命です。
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